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マツケンCSR通信

松下生活研究所のCSR(企業の社会対応力)をめぐる日々の動きを発信していきます。

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伝統建築に打ち込む

浦田浩。 35歳。
大工職人。

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     笑顔の良さに定評のある浦田さん

今や貴重な存在となった「手刻み」で自ら木材を加工し家を
建てる若き棟梁です。

現代の木造建築は「プレカット工法」と呼ばれる、あらかじ
め工場でカット加工された木材を現場で組み合わせると
いうやりかたが主流を占めています。

その方が工期が短縮でき、安定的な材料供給もでき、
結果的に人件費・経費の削減につながるからです。

「手刻み」と呼ばれる、木材を自分で手仕事加工して家
を建てる大工さんは、現代ではほとんど見られなくなり
ました。

手間と時間がかかり、経済効率も悪いからというのが
その理由です。

いつの間にか、採算性や経済効率最優先になった社会
では、ある意味仕方がないのかも知れません。

しかしながら、ごく少数派の建築家たちは今でも、昔なが
らの「手刻み」にこだわり、手間暇をかけて家を「造って」
います。

彼らは、このやり方こそが、本当の木造建築だという信念
と誇りを持っています。

木材には、それぞれの個性があります。

経験豊富な大工さんは、一つ一つの木材の個性
(曲がりや微妙な弾力など)を見抜き、その特性を
活かして使用します。

まるで、優れた教師が、生徒の特性を見抜き、その
個性と能力を生かし、伸ばしていくように。

一方、プレカット工法では、木材をひとくくりに「材料」
として加工しますので、それぞれの個性を活かすという
考えはありません。

木材はあくまでも工場で加工するただのモノ、「材料」
なのです。

浦田さんは木材とまるで生き物のように向き合い、
対話し、丹念に「手刻み」で加工し、家を「造る」大工
職人です。

現在、松下生活研究所LLC.建築部門の専属大工職人
として腕を奮っています。

昨年の7月から浦田さんの大仕事がスタートしました。

山都町鶴ヶ田のK邸の新築を初めて一人で請け負うこと
になったのです。

三世代7人が同居する予定の大きな二階建ての木造
住宅です。

実際の木材加工のための図面起こしから、材料の手刻
み加工、そして組み立てまで、すべて自分でやります。

もちろん要所要所でほかの業者の手は借りますが、
基本的には一人で請け負う大きな仕事です。

木工事をまるごと請け負う仕事は、大工になって
これが初めての経験になります。

「責任があるので緊張するし、だからこそ命がけ、
やりがいがあります」

と浦田さんは語ります。

現場が自宅のある植木町からは遠いため、K邸の敷地
にある納屋を借り、その中にテントを張って自炊生活を
しています。

最愛の家族(奥さんと2歳の男の子)から離れ、泊まり込
んで日々取り組む「手刻み」の家造り。

まだ寒さ厳しい去る2月の始め、山都町鶴ヶ田の現場に
浦田さんを訪ね取材しました。

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材料の木材に墨付けをする浦田さん

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浦田さんが2週間かけて描いた「板図(いたず)。
薄い板に設計図の柱と梁などを書き写したもので、
これを元に墨付けしていきます。


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板図に手書きで丹念に書き込まれた「二階床伏せ図」。
どこにどの木材を使用し、どのような構造になっているか、
これを描くことによってすべて頭に入ってしまうと浦田さん
は語ります。


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木材一本一本の状態を確認しながら使う部位を決めて
いきます。
プレカットではこのような技はできません。

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込み栓(こみせん)の説明をする浦田さん。
木材同士の結合を強固にするため打ち込む15ミリ角
程度の堅木材を「込み栓」といいますが、その結合を
より強固にするため、わざと1.5mm程度穴をずらす
といいます。
日本伝統建築の知恵です。


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浦田さんがイノチのように大切にするノミやカンナの
道具たち。
毎日、仕事を終えると30分ほどかけて丹念に手入れを
するそうです。
「道具が仕事を教えてくれる」
と浦田さんは言います。


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納屋の中に設けた本棚の書籍。
伝統構法を科学的に設計する木構造の第一人者・山辺構造設計
事務所・山辺豊彦氏の著書が見えます。
浦田さんは、この山辺氏の「九州大工塾」に7回
ほど通い、直にこの構法を学んでいます。
松下生活研究所は、その構造の考え方を基に熊本県立大学教授と
耐力壁を研究し、「渡り顎構法+落とし込み板壁構法」を採用して
います。
ちなみに昨年の熊本地震において松下生活研究所がこの構法で
建てた住宅はほとんど損壊がなく、その耐震的強固さが注目を集めました。

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このK邸は五木村産の「葉枯らし乾燥木材」を
採用しています。
五木産の木材を使用して建てる住宅を「五木源
(ゴキゲン)住宅」と呼びます。
気品があり美しい五木村産の木材。
美しくキモチのいい木の家で、住む人は「ごきげん」に(^^)


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基礎部分が仕上がったK邸の外観。向こうに見える現在
の母屋は、新築後に解体予定です。

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この日打ち合わせに訪れた松下生活研究所・松下所長
と建築スタッフの持田美沙子さんと話す浦田さん。

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この日から約一か月後、3月11日のK邸上棟式の時の
浦田さん一家。
一家の大黒柱の晴れの日に、奥さん子供さんも大喜び。


CIMG4440-1.jpg
上棟式の日のK邸の外観。
がっしりと美しい、という印象。

この取材を通して、感じさせられることがたくさん
ありました。

仕事とは何か。

イノチがけ、とは何か。

建築家としての良心とは何か。

住まいとは何か。

人と人との絆とは何か。

浦田さんの、このK邸にかける責任感と情熱が、これらの
問いに答えを与えてくれるような気がします。

自分の仕事に本気で打ち込み、命がけでやり遂げる。

日本の伝統的な建築技術と職人魂を継承する若き棟梁
の挑戦はこれからも続きます。

(取材・文責 岸本 亨)


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[ 2017/04/09 09:50 ] 未分類 | TB(-) | CM(0)


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